昔、私の記憶では、大阪の阿倍野区に早川電機工業と言う会社が在って、早川徳次と言う叩き上げの創業者がいました。
この早川徳次社長が発明したのが、今、皆が使っている、芯の繰り出し式鉛筆であるシャープペンシルなのです。この会社は、戦時中にはラジオの生産に進出し、その電気事業が戦後テレビの生産に繋がりました。社名は早川電機を経て、現在のシャープに成ったのです。
大阪には、家庭電器のメーカーで、ご存じの松下電器産業(現パナソニック)や三洋電機(パナソニックに吸収される)が有りましたが、当時からシャープは大阪の企業の中で、一匹オオカミのユニークな存在だったと記憶しています。
近年、シャープは液晶テレビの開発で目覚ましい発展を遂げ、テレビ事業の盟主SONYにその地位を取って代わる程の企業に成長しました。しかし、国内メーカーや韓国企業との競争に打ち勝つため、4~5年前よりテレビ事業や携帯、モバイル向けの液晶生産の大規模な設備投資に向かいました。それは、パナソニックやソニーにも言えることですが、日本のテレビ放送事業が2011年に地上デジタル放送への移行が過ぎると、国内需要は急速な落ち込みを示し、海外販売では、対ドル、対ユーロでの大幅な円高もあって、販売競争で極めて深刻なアゲンストの風に見舞われたのです。
今年3月の決算で、国内のエレクトロニクス産業は各社共、大幅な赤字決算に陥りました。液晶生産に特化したシャープは、現時点で来期も続けて2500億もの赤字を見込むと言う状況に陥っています。
この春、シャープは業績の再建に、台湾のエレクトロニクスのアセンブリー企業である鴻海(ホンハイ)の支援を仰ぐ事を決めました。シャープの株式を鴻海に持ってもらい、当面の資金繰りに充てようと考えたのです。しかし、シャープの株価は、現在、支援交渉時点から大幅な値下がりとなり、当初見込んだ資金を得る事も難しくなっているのです。
融資を担う銀行からは、更なる事業の縮小とリストラを迫られているのです。シャープは5000人もの人員削減も合わせて計画されているようですが、これらの、日本の電機メーカーの事業不振について、日本の経済団体や政府、経済産業省は知恵を貸さず傍観するのみなのでしょうか。
そもそも、支援先がどうして海外の台湾企業なのかと、疑問が持たれます。これらの一連の大手電機メーカーの事業不振は、日本の雇用にも大きく影を落としています。
今、これらの国内企業の事業不振に対して、国内の銀行や経済団体、それに政府経済産業省は、なす術を持たないのでしょうか。オリンピックでは有りませんが、この様な時こそ、国内が一丸となって、国内産業をサポートする体勢を構築する事は出来無いものかと考えるのです。
バブルの崩壊では、日本の金融の崩壊に歯止めをかける為、大手銀行に対して、国の資金投入も含めて、様々な手が打たれました。今回の東京電力の東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故についても、東京電力の事業存続をサポートし、税の大量投入による国有化で乗り切ろうとしています。
必ずしも民間の企業に国が直接支援を行う事は、資本主義社会では妥当な事だとは考えませんが、日本の金融業界や経済団体で、危急の国内エレクトロニクス業界の後押しについて、オーガナイズする手法は無いものかと考えるのです。
今こそ、産業界のチーム・ジャパンを発揮する時では無いかと思われて成りません。日本のこれまでの経済成長を主導してきたエレクトロニクス産業の衰退は、取りも直さず日本経済の決定的な凋落を印象付けることに繋がると考えるからです。
欧米の資本主義先進国の間でも、政府や社会が一体となって、これら、自国の産業をバックアップしています。今の日本の政治は、あらゆる面でこの様なきめ細かなサポートが抜け落ちているのでは無いかと思われて成りません。
理念が無い上に、それまでの絶対的な経験の欠如が、国家運営上の全ての面に現われているように思えるのです。一々マニュアルを広げなければ決断できない、形だけの政府の存在がネックとなっていると、考えられないでしょうか。国家戦略担当大臣などと言うポストはどこで機能しているのでしょうか。
20年に及ぶデフレ環境下に、それでも、主だった日本の大手企業は大きな内部留保を溜め込んで来ています。世界的な輸出競争を余儀なくされる自動車やエレクトロニクス産業は、その性格上多大の設備投資が成長の鍵と成っているのです。
2008年、米国のリーマンショックを経て、欧米の経済状況は予断を許さない状況が続いています。
現在の民主党政権は、当初の政治主導を標榜しながら、結果は日本の官僚資本主義を助長し、国民の意思に反する政策を平然と推し進めると言う、全ての面で、ちぐはぐな印象を免れません。
真の財政再建の為にも、国内産業の適切なサポートの上で、企業の成長戦略に関わって行く必要が有ります。民間活力をサポートする事が、過剰な政府支出を削減する一つの手法に繋がると考えるからです。
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