随分昔、どんな場面で彼がそう言ったのか忘れてしまったが、その時聞いた言葉だけが、その後も私の頭の中に、忘れず長く残っている。
「性は善、根は怠惰」と言うフレーズの言葉だ。その時の言葉の意味は、「人と言うものは、皆、善人ばかりだが、本来、怠け心を持っているものなのだ」と解釈していた。大体、その言葉の語源も知らないし、言った当人も、それを知って言ったかどうかも疑わしい。
しかしこのフレーズを考えて好意的に解釈すると、「本来、怠惰な人間も、皆、善人ばかりなんだ」となる。つまり、中国の儒教思想の性善説的な考えとして解釈されるのかも知れない。
孟子が唱えたこの性善説は、国を治める考え方として、本来、善で有るべきと考えたのだろう。
東日本大震災から1年を迎えるにあたって、当時の状況が振り返られる。特に、福島第一原子力事故の状況で、政府部内がどうなっていたのかが、おぼろげに分かってきた。と言っても、当時の政府部内の事故対応について、ほとんどの会議の議事録が取られていなかった事が、後に成って判明した。しかも、事故当初に政府部内で炉心のメルトダウンが認識されていたにも関わらず、官房長官をはじめ、政府は国民に対して嘘をついていた事が分かったのだ。
当時、政府部内で各対策本部の議事録が作成されていなかったと言う事を、簡単に考えるべきでは無いと思っている。このことは、事の真相を、もっと徹底的に調査しなければならない事柄だと考えるからだ。
津波による原発事故の発生以来、米国の政府部内や関係各所で綿密な記録が録られていたことも判明してきている。日本ほどの先進国の政府で、初めての経験とは言え、原子力事故のどさくさで、無作為に議事録の作成が失念されたと考えるのは、人が良すぎると思うのだが如何だろうか。
関係者が、皆、口をつむげば事の真相を突き止めることは、難しいかもしれないが、メルトダウンの可能性を指摘した者が即、更迭されたと聞くと、国民への情報統制が相当行われていた可能性が伺える。
そこで、もう一度「性は善、根は怠惰」を持ち出すと、良いやつばかりなのだが、つい面倒くさくて記録を取るのをさぼってしまった、で済まされる問題か如何かなのだ。
まだ、一年しかたっていないので、首相は変わっても、当時の政府関係者のほとんどが、国政の運営に携わっている。
人為(ひととなり)から、孟子の唱えた性善説で事を済ます事が出来れば、こんなに良い事は無いと思うのだが、後顧の憂いを警戒して、取るに足らない事と小賢しく簡単に考えた事が、命運を分ける事にも成り兼ねなと言う事を、肝に銘じて置くべきだと思うのです。
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