2012年7月25日水曜日

この政権の拠り所

  毎日新聞に、「保守色を打ち出す野田首相」と言う見出しを見ました。
社会保障と税の一体改革法案の成立の目途が立ったこの段階で、野田総理は集団的自衛権を容認する発言に及びました。更に、尖閣諸島の国有化やTPPへの参加の意向を強めようとしています。
  もうすでに、福島県の大飯原発3、4号機の再稼働を、「自らの責任で」と決断し、定期点検を済ませた全国の原発の再稼働に道を付けた形に成っています。
更に、米軍による沖縄普天間基地への新型輸送機オスプレーの配備について、「配備自体は米国の判断で、どうしろ、こうしろと言う問題では無い」と、日本政府として拒否する問題では無いと発言しているのです。
  これら、一連の野田首相の行動や発言を、これまでの民主党の総理大臣の中で見ると、「大したものだ」と評価する声が、あちこちから聞こえて来ます。
しかし、政権交代前の民主党のマニュフェストに掲げてこなかった、消費税の増税については、多くの物わかりの良い国民の間で、将来の社会保障の為で有れば致し方ないと、容認する意見も多いのですが、それ以降に野田首相が決められない政治からの脱却を目指して決断した判断は、はたして、全て、日本の国民を見据えた物なのでしょうか。
  民主党の党内にも大きな亀裂を生じさせた、これまでの野田首相の決断の胸の内を考えてみると、それらは、いずれも自身の発言や行動に好意的に見える米国の存在が有るのでは無いかと想像出来ないでしょうか。

  中国を刺激してまで尖閣の国有化を言い出した背景や、反対意見が多い集団的自衛権の容認発言、更に多くの議論を残すTPPへの積極的参加の意志など、一連の行動や発言が自身の国際的評価のバックボーンとしての、米国を強く意識したものでは無いかと考えられるのです。
そうだとすれば、此れほどの関係自治体や沖縄の猛反発をよそに、新型輸送機オスプレーの配備について、米国に物が言えない野田総理の立場が理解出来るような気がするのです。
党内基盤が、必ずしも盤石では無く、事あるごとに早期の解散を迫られる不安定な政権に在って、今の野田首相の最大の拠り所は、自分を評価してくれている米国との関係ではないかと想像するのは的外れでしょうか。
  国民との多少の軋轢が生じても、個別の問題に焦点が行っている間は、消費税増税法案と同様、一つ一つは「何とかなる」と踏んでいる節が有るのでは無いかと考えるのです。
  この時期での、党の分裂に繋がった消費税増税への強い拘りや、大飯原発の再稼働の決断、それに、TPPへの積極的参加表明は、いずれも国内的に自らの支持母体や産業界を大きく意識したものだと考えられます。
  この様に、野田佳彦と言う政治家は、やっとたどり着いた日本の総理大臣と言う地位に、この先も何とか留まり続けようと、国民の反発をよそに、自らを支えてくれる背景に対して必死にアッピールしている様子が、ありありと見て取れるのです。
野田首相本人としては、当然、日本の為、国民の為と言う大義を持った行動と考えての事だと思うのですが、無意識の利己心に埋没するあまり、国民を衆愚と錯覚する事の無いようにしてもらいたい物です。  何処に、誰に目を向けて政治をするかの視点が、ずれていると言う他有りません。
毎週の金曜日、真面目な国民の静かなデモが首相官邸前で数を増していますが、大飯原発再稼働反対から、オスプレーの配備容認やTPP参加強行で、衆愚の国民による野田政権退陣要求が高まる可能性が出てくるのではと考えています。

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