2011年5月8日日曜日

安全対策が見えない

 政府というより、いつものリーダーの唐突なパホーマンスで、原発を抱える地域自治体や、住民に困惑が広がっている。トップ就任以来、唐突に消費税の引き上げを持ち出したり、いつも、事前の十分な論議や説明の無いまま、自身の存在を誇示するような振る舞いには、正直、その行動動機に訝しさを感じる。
 浜岡原発は、兼ねてから東海地震の予想震源域に位置しており、稼動停止を求めた地域住民による訴訟まで起こされている(高裁は住民申し立てを棄却)。この浜岡原発の政府による停止要請についても、ことさら、自身の決断を強調するとトップの動機は、彼特有の受け狙いと、自身の政治的立場の延命を意図したパホーマンス以外に何も無いと思われる。
 何故なら、何時もの事ながら、停止に伴う、前もっての様々な計画論議も無く、その後の電力供給の影響などを無視した一方的な発表となっているからだ。政府のトップ自身がこれまで浜岡原発の存廃について、長らく調査し悩んで来た結果とも思われない。
 内閣官房長官などは、過去の民放TV出演で浜岡原発の停止を問われ、浜岡原発は「停止しようと、停止しまいと危険は危険」と言い切って、政府方針として存続を決定している、と発言をしている事を思えば、今回のトップの決断と言うのも、通商産業相の視察後の報告に対して咄嗟に飛びついたとしか考えられない。
 浜岡原発の停止そのものは、直下型地震の耐震レベルに疑問がある以上、停止でも廃炉でも良いと思うが、原子炉は運転を停止したからと言って、直ちに安全かと言うとそうでは無いらしい。
炉心が冷温安定状態になるまで長期間、水で冷やし続けねばならない上に、使用済みの燃料が原子炉近くの燃料プールに置かれている状態は、原子炉が停止していようが、していまいが危険な状況には代わりが無いという事だ。そのような状況下で、大規模な地震に襲われて、原子炉の破壊や冷却システムの壊失が起これば、今起こっている、福島原発のような原子力事故に見舞われることになる。
 今日になってトップは浜岡以外の原発については、停止要請は行なわないと発言している。浜岡原発の危険性がそれほど切迫しているのであれば、停止する、しないを問わず、何をさて置いても現状の更なる耐震化と津波対策に早急に取り掛からねば成らないはずである。しかし彼からは、停止後のプランは何も語られていない。15メートルの津波対策の防波堤が出来るのに2年掛かるので、それ迄はと言っているのみだ。この様な、パホーマンスをする前に、現状の原発の安全性について、厳しい基準での一斉点検と今後の安全対策への資金投入なりを議論すべきではないのか。今回の福島の事故を受けて、ドイツなど欧州各国は、一斉に原発の安全性検査に入った事を伝えている。
 勿論、日本でも、通産省の支持で各電力事業者の点検が行なわれていると思うが、現在ある政府の原子力安全委員会や通産省の原子力、安全保安院が主導する形で我が国の54基ある原発の安全性見直しが行なわれていると言う話は聞かない。
 それと、原発を止める決断はそれで良いとしても、それによる産業や社会インフラ、国民生活に対する影響の議論とバックアップについて何のて手立ても示さない政府と言うのは、如何なのだろうか。前もっての議論が無い以上、それらが、示されるわけがないと思うのです。
 国の司令塔としての内閣とそのリーダーに対して、誰もが大きな不安を持つている。

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