2011年7月18日月曜日

エネルギーの議論

 定期点検中の各地の原子力発電所の再稼動問題について、首相と所管大臣の意思疎通が図られていないと言う事で、各方面に大きな混乱が生じた。
経産大臣が地元に再稼動を要請したその後から、首相が更なる耐性テストを実施する意向を示すなど、地元も経産大臣も梯子を外されて、面子丸つぶれの状態の様だ。さらに、首相は追い討ちを掛けて、将来的な脱原発も打ち出して見せた。       そもそも、首相は与党の中からも、賛成に回る可能性が高かった、衆議院の自身に対する問責決議案が通りそうになって、与党の集まりで退陣を表明した。ところが、そのことで、与党内がまとまり問責決議案が与党の多数決で否決されると、今度は、退陣時期を先延ばしするような行動と言動を、次々に打ち出してきている。 首相の素性を知る者に言わせると、彼は、現在、昔の社会民主連合当時の権力闘争意識が蘇っているのでは、と感想を述べる者もいる。
 何しろ、与党内で、首相に対する不信感が充満し、自身の内閣や執行部から孤立して、ほとんど政策の論議の無いままに、思いつく事柄を口にする様なのだ。
 全国の定期点検終了後の原発再稼動問題にしても、将来的な脱原発と言うこれまでの政策から大きく舵を切る政策提案にしても、これらは、国の形を決めるほどの重大な問題であり、当然、より広範な国民的議論を必要とする問題では無いだろうか。それは、社会福祉や、国の財政にも及ぶ重要問題であると思うのです。
 今日、新たな原発をつくり、国のエネルギーを全面的に原発に依存して行こうと言う考えは、さすがに下火に成っている。しかし、12.700万人がこの日本列島で今までのような生活レベルを維持し、大小の製造業が、国内での生産活動を継続していく上で必要になる電機エネルギーは、現実問題として、一時的に10%~15%の節電では賄う事のできない大きさが、必要になると言うのです。
 企業が自前で持つ、自家発電や、水力、火力、風力、太陽光などの自然エネルギーを組み合わせても、原子力エネルギーを全廃するには、相当の技術開発を伴う10年単位の年月が必要になるというのが定説です。
 さらに、地球レベルで考えると、二酸化炭素を減らす世界的な取り組みの必要性から、現在も中心的な役割を果たしている化石燃料に依存し続ける事の問題点が指摘されているのです。
 さらに、日本のエネルギー政策を難しくしているのは、今迄これを電力業界と二人三脚で推進してきた所管省庁や御用学者も含め、既得権益に寄り添って来た国家権力の構図があると思うのです。そこに、やらせメールで分るように、電力業界の古い体質が表面化しました。
 国として必要なエネルギー問題の正しい評価の議論の他に、この様な、国としてはなはだ好ましくない構図が同居している為に、電力事業の発、送電分離の議論も一連の既得権益の構図の中に飲み込まれてしまい、本当に、何が正しくて、何が問題なのかの見極めが、非常に難しくなっていると思うのです。
 国のエネルギーの将来像を誤ることは、国民の富と生活にとって、致命的な問題になりかねません。今後、この事を切っ掛けとして、確りした多角的な議論を望みたいと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿