2011年4月13日水曜日

福島原発は映画なのか?

 余り悠長な事を言っている暇は無いのです。時々政府官邸の一日の動静を覗いてみるのですが、今回の、未曾有の大災害を受けて、政府の体制が、事態に即応しているとは到底思えないのです。そこに出入りする人間が余りにも少ない。現状を考えると、引きも切らない出入りがあっても可笑しくない時期に、ほとんど、決まった政府高官がまばらに出入りする程度なのは、たまたまなのでしょうか。
 今の所、政府は国民が、パニックや混乱を起こしていないと言う事に限れば、大成功していると思うのですが、それは、あたかも、逐一、情報を開示している様に見せかけて、実はほとんど肝心の事を国民に説明してこなかった事の裏返しでは無いでしょうか。幸い国民の目線は、大津波の被害を受けた被災地に注がれていて、原子力事故の実態を深く理解していない、お目出度いマスコミは原発の認識不足から、発表される数字の意味を掴みきれていないのが実情です。それは、海外から見れば、日本国民は、あれだけの原発事故を起こしながら、混乱もパニックも起こさず、平然と日常生活を送り、被災地の救援に向かっている。賞賛する傍らで、ある意味信じられない思いをしているのでは無いだろうか。福島原発の現場は、思いも寄らぬ事態に、日々、薄氷を踏む思いで対応していると想像したが、原子力保安院の発表や枝野官房長官の記者会見を見ていて、意味不明の数字を羅列し、その数字の意味がほとんど説明されていない事に疑問を持った。そして、発表の最後には毎回、それは、直ちに健康に影響するレベルではない、という講釈が付け加えられる。しかし、当初、原子力安全保安院が発表したレベル5の事故評価についても、4基もの原子炉の事故を起こしながら、そんなはずは無いという海外の専門家も多かったというのだ。
 福島原発の半径20キロ、30キロについての枝野官房長官から発表された退避、避難指示も、今になって、なし崩し的に変わろうとしている。始めから、事実を事実として正確に説明していない為、地域の人達の理解を得られるはずもない。挙句の果てに、昨日になって、国際原子力事故評価機構(INES)の評価を最上位の7に変更した。その理由も、原子力安全委員会と原子力安全保安院の推計値のとりまとめで、事故以来の放射性物質の放出量がチェルノブイリ原発事故時を上回ったという理由からだ。今になって、あっさり、数十万テラベクレルという数字を発表して、そうした量の放射能がこれまでに放出された為、チェルノブイリ原発事故に相当するか、それを上回るレベルになったと言っている。
 しかし、そのような事が、事故発生以来、一月もたった今迄、分らなかったというのは俄かに信じられない。ウォールストリートジャーナルは米国の専門家の意見として、もっとも驚いたのは、現在までの放射能放出量が一月もたつ今まで分らなかったことだ、と言うコメントを伝えている。その数字をはじき出した、独立行政法人原子力安全基盤機構というのも、霞ヶ関の天下り法人なのだ。  正直、日本は如何なって行くのだろうという思いがする。多くの国民の健康に、致命的なダメージを与えるかも知れない原子力事故が、この狭い日本で現在進行している。にもかかわらず、全く信用した事もない、命を預けた覚えも無い一握りの政治家達が、その情報を秘匿しているのではないかという疑問は、まるで映画の世界だ。政治的な判断を国民に押し付けて、人としての正しい判断を取り違えているのではないだろうか。これまでの政府の対応が、大変危惧される。
 今も続いている放射性物質の放出で、今日になっても枝野官房長官は、国民の健康被害に繋がらないように、確り対応していくという言葉を繰り返している。
 このような政府の原発事故の対応は、国際的には受け入れられるだろうか。17日には米国のクリントン国務長官が来日して、政府と、この問題について協議すると思うが、協議するというより、米国にとっては大変な懸念を抱いているに違いない。国際的には日本政府が、事故の実態を押さえ込み、過小に表現しようとしているのではないかと疑われているのだ。国際社会は、日本の、権威ある専門機関からの迅速で正確な情報開示を要求している。
 日本にとっては、幸いな事に、モンゴルやゴビ砂漠から飛来する黄砂の季節で、西から、強い偏西風が吹き、放射能は東側の海上に運ばれて行く。しかし風下の北米地域にとっては、冗談ではない。国内でも、そのような事実を確認している多くの人がいると思うのですが、大多数の国民は何も知らされていない。先日、TVでコメントを求められていた福島の家族は、1000キロも離れた鹿児島に疎開しており、夫は福島原発で復旧作業に当たっていると言うのだ。又、堀場製作所とか日立のアロカなど放射線計測機製造メーカーの株価がストップ高をつけたり、昨日になって、急にフランスのメーカーが安価な放射線計測機の供給を始めると発表しているのも頷ける事実だ。
 決して、危機感を煽るのではない。正確な事実が伝えられないと、事が進んで後から知らされるのでは、多くの国民は遣り切れない思いをするに違いない。政府は事実を事実として速やかに、情報開示しなければならない。現代の社会で、決して、「依らしむべし、知らしむべからず」、のような事が、まかり通っては成らないと考えるのです。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿