2012年1月16日月曜日

消費税増税と財政の闇

ネバー、ネバーネバー、ネバー、ギブアップ。メタボのドジョウが呟いた。菅内閣を引き継いだ野田首相は自己の政治生命を掛けるとばかりに、消費税の増税に意欲を燃やしています。今や、日本の財政が、とんでもない事になっていると言うのは内外で周知の事実なのですが、政治家が決して明らかにしようとしない日本の財政の歳出構造について、このままで行くとしたら、ちょっとやそっとの増税では将来を担保することなど絶対出来ない事を、承知した上での主張なのだと思うのです。
平成16年の事になるのですが、参議院の総務委員会の場で元民主党の松岡満寿男と言う元参議院議員が質問に立って、国、地方の公務員の人件費が60兆円になっていて、現在70数兆円しかない税収では国の経営は成り立たないと、発言しました。この時から、日本の公務員数は正規の公務員のほかに準公務員とか臨時の職員とか国地方の税金で賄われる公務員数が議論されましたが、その総務委員会での政府側の答弁で、もろもろ合わせた国所管の公務員数は、160万人との説明をしているのです。

野田首相は、この消費税増税を主眼とした税と社会保障の一体改革を打ち出して、今回その為に、内閣改造を行い、合わせて国会議員の定数削減や公務員人件費の削減に取り組む決意を表明しています。しかし、国会議員の定数削減や歳費の見直しも大切ですが、戦後日本の社会を世界第二の経済大国に押し上げた、国の運営の制度と財政の歳出構造を、抜本的に見直さなければ、小手先で消費税増税に漕ぎ付けても、早晩行き詰まる事になるのは明らかだと思うのです。
先の、松岡元参議院議員の主張は別にして、去年、2011年の財務省資料によりますと、国家公務員の人員は56.4万人(行政機関30.2万、自衛官他特別機関26.1万)その人件費は5.2兆円。地方公務員の人員は285.5万人(一般行政95.5万、公立学校教員107.6万、警察消防他公営企業82.4万)その人件費は27.8兆円との事です。以上から、国地方の税金で賄われている公務員の総数は342万で、財務省の資料を信用するとすれば、その人件費は合わせて総額33兆円と言う事になります。 
ちなみに、総務省が発表している昨年の資料によりますと、2011年、平成23年度予算の地方財政計画額から、国の税収が約41.7兆円、地方税収の合計が約35兆円と成っています。そうしますと、国、地方の税収合計は76.7兆円と言う事になります。ここで、単純に見ると、国、地方の税収合計額76.7兆円の43%もの税金が全国の公務員人件費に充てられているに等しく見えるのです。これは、国民が享受する、国、地方の行政サービスの経費として容認される金額なのでしょうか。
ここで、日本のここ10年の国の一般会計予算歳出を比較した単純な資料を見付けたのですが、世界的にリーマンショックが発生した2008年の麻生政権時を別にして、2001年~2008年度の小泉、安倍、福田政権の一般会計の平均歳出額は83.6兆円になっていて、一方2010年~2012年度の鳩山、菅、野田政権は平均94.3兆円となっています。その差は、実に10.7兆円の実質財政悪化と成っている事が分かります。
そして、その期間の国債発行額の単純比較を見てみますと、2001年~2008年度の小泉、安倍、福田政権の平均発行額は31.6兆円で、一方、2010年~2012年度の鳩山、菅、野田政権は44.4兆円と12.8兆円も自民党時代よりも増えていて、歳出額の単純差額よりもさらに増えていることが分かります。
お金に色はついていませんから、財務省が発表している国、地方の公務員人件費の総額が33兆円である事を信用すると、自民党政権下の小泉~福田首相当時でも、2011年度の国、地方の公務員人件費の33兆円は、その当時の毎年の国債発行額を上回っている事に成ります。もうこれは、他人事のようにギリシャの噂をしている場合では無いことは明らかです。
しかも、経済産業省所管である原子力安全基盤機構の様な、何の国民の役にも立たない独立行政法人に国の税金をつぎ込んで、寄生虫の様な天下り役人を飼っているなどは、腐った官僚機構の典型であり、野田首相は消費税増税前に、まずそうした仕組みを根本から作り変える事に、意欲を燃やせないものかと考えるのです。
もちろん国による、教育や治安、防衛等の一定の行政規模や、年金、医療、介護の社会福祉のセイフティーネットの確保は、国の運営上必要不可欠である事を重々承知したうえで、国、地方の行政機構の時代に合わせた抜本的な見直しと、合理化を断行しなければ、増え続ける国債残高に歯止めをかける事など、到底無理な話だと考えるのです。
小泉自民党時代に国債発行残高の30兆円に拘った取り組みを思い出しますが、今や思い出に浸っている暇はありません。
日本の戦後の復興と経済成長は、資産バブルの崩壊で、1990年ごろを境として下降局面を迎え、思わぬ長期低落で今日の低成長時代に至っています。
公的機関も戦後の高度成長の時代に民間に並ぶ処遇を勝ち取ってきました。たゆまぬ努力で、自らの所得環境の改善に取り組んだ結果、日本には公務員天国という言葉が生まれたのです。
 公的機構では、経済成長のピークアウトで日本経済全体と民間企業の業績が下がり続けても、一旦勝ち取った権利や処遇をたやすく手放す事はありません。しかも、日本の政治を主導してきた政治家の多くが、国の官僚や公務員出身の地方議員とその世襲議員で占められていました、このことが、国、地方の公務員組織の静かな自己増殖を許す事に成ったのでは無いでしょうか。
今回見た日本財政の一般会計では、私の様な素人でも数字上の比較や推論をする事が出来るのですが、225兆円と言われる特別会計の中でうごめく国家公務員や関連行政法人等では、一般国民が容易く伺い知れない、もっと複雑な闇が存在するものと思っています。
私が思いますに、財政の立て直しと国民生活の安定化には、どうしても経済の分母を押し上げる政策が不可欠では無いでしょうか。どこまでも、増税で事態を凌ぐ事は出来ません。日本産業の活力を取り戻す政策がかならず必要です。民間経済の成長を手助けして、税収増に結び付ける政策なくして、財政の好転や再生は無いものと考えるのです。

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